皇子と偽りの花嫁～皇宮オメガバース～ (角川ルビー文庫)

個人的に小中大豆さんは可愛くときめく両片想いをとても素敵に書かれる作家さんだと思います。読者は「ぜったい両思いだよ！」と思いながらも、登場人物たちは色々悩み、トラブルに巻き込まれ、横槍が入り、ようやく互いの気持ちを伝えあう。この王道がたまらなく切なく魅力的なのです。今作も几(Ω)であることを隠した怜藍が、訳あって几を娶りたくないけど、娶らなければならない之(α)の第三皇子州舜の元へ嫁ぐところから物語は始まります。薬を扱う怜藍は発情期を抑える薬を調合できるので、絶対にバレないと自負していた矢先、何者かの策略で強制的に発情し、州舜に几であることが知られてしまうのです。それまでの２人のやり取りが本当に仲睦まじく穏やかな分、怜藍を何とか手元に引き留めたい州舜と州舜の元を去らねばならないと決意する怜藍が切ない。皇宮モノなので避けては通れない皇位継承権問題、狙われる怜藍、事なきを得るとは言え途中読むのが辛くなる場面もあります。州舜が几を娶りたくない理由がとても悲しくて、それを分かって己に降りかかった災いに心痛める怜藍。そこには互いを思いやる不器用だけど慈愛に満ちた２人がいます。辛くても、小中さんの作品は絶対幸せな気持ちになれるハッピーエンドだと思うから、それもまたスパイスです。中華だからとαΩと言わず、之几としたのが世界観を崩さず良かった！中華ファンタジーや皇宮物が好きで、オメガバースも好きな方なら絶対オススメです。